私たちは通常、ハードタイプのドライパステルを使って紙に絵を描いていますが、その手法は、デッサン的な今までのパステル画の手法と少し異なっています。
パステルのたくさんの粉を、パステル画用紙ではない目の粗い水彩画用紙に何度もこすり付け、分厚く刷り込む手法によって、深い色合いや微妙な変化が生み出されるのです。
この手法によって、細かい色の粉が計算できないほど複雑に組み合わされて、独特の色や新しい世界観が創り出されてゆきます。
この私たちのスタイルが、実は非常に前衛的な芸術形態である『アンフォルメル』(Informel 不定形の芸術)と呼ばれるものに属することを知ったのは、私たちがこのスタイルで描き始めてからずっと後のことです。
欧州に住んでいる頃、縁あって、ある欧州の美術大学教授の方に私たちの絵をご評価頂いたことがあったのですが、その時、彼は私たちにこう言ってくれたのでした。
「君たちの作品はアブストラクト(抽象芸術)ではない。アンフォルメシオンという、芸術家の魂を激しい感情表現によって素材に叩きつける作業を通して生み出された芸術作品にあたるものだ。これは従来の職業芸術家から生まれることはない苛烈な表現であり、君たちの辿ってきた生き方、そしてこの絵の輝きがそれを証明している」と。